2020年11月7日(日)zoomでのIPS勉強会のご報告

2020年11月7日(日)10:30-12時にIPS東京勉強会をzoomで開催しました。

本日も、東北地方から九州までさまざまな地域からご参加いただきありがとうございました。今回はいつもより少し多めの22名のご参加でした。

東京のIPS勉強会が、もうすぐ満10年というお話を今日の勉強会で少ししました。
意図的なピアサポート (Intentional Peer Support: IPS) は、2008年12月にシェリー・ミード(Shery Mead)さんとクリス・ハンセン(Chris Hansen)さん、久野恵理さんに日本にいらしていただいて、「IPSピアサポート研修」として研修会(5日間)が久留米で開催されたのが日本で多くの方が関わり始めた最初だと思います。その後も京都や東京での研修会にシェリーさんにいらしていただきました。そして当時米国に住んでいらした久野さんがスカイプでつながってくださりながら、千葉県の市川市やほかの地域でもIPSの勉強会が開催されたり、久野さんによるIPS研修会が開催されたりしている中、東京のIPS勉強会がはじまりました。(東京の勉強会の初回は2011年1月16日(日)でした)

そんなこんなでもうすぐ11年目になろうとしている東京の勉強会ですが、このところは、IPSのワークブック7巻の、精神保健の医療や支援の機関で働き「ピアサポート」をしていくことについてがテーマです。

まずは先月の振り返りで例3の、
「村上さん(あなた)は、江川さんとピアスタッフとして関わっています。村上さんと江川さんは何でも話すことが出来ているようです。そしてある日、江川さんは村上さんに「あなたが私と会って話すのは、ここで雇われているからですよね」と言います。村上さんは何と言うでしょうか?」という例について話しました。
  • 自分にも似たような経験あり。今の自分はあなたの声が聞きたいとは言えないな、というようなことを言っていたら、また違う会話、関係になっていたかも。
  • テーブルの上に出すというのがすごくいい表現だと思った。
  • 勉強会としては、村上さんの側に立って考えるのだと思うが、自分は江川さん側に感情移入をしてしまう。こういう肩書だからできていた関係性なんだなと考えちゃったり。
  • 自分は雇われている人に目一杯お金を払って目一杯話をしたい、それを心地よいと思っている患者である。
この話もまだまだ続けたいところではありましたが、続いて、今日の題材です。

例4:「松本さんと長谷川さんは、地元の精神保健センターで一緒に働き始めてしばらくたちます。お互いに思いを共有し合う関係で、組織の中でピアの声を作り上げていることを誇りに思っています。しかし、松本さんは、長谷川さんが自分のことをスタッフ(職員)と呼び、“自分のクライアント(担当利用者)”について話していることに気付き始め、長谷川さんが、ピアサポートの視点を失いつつあるかもしれないと心配しています。ある日、廊下で、医師が長谷川さんに、長谷川さんの担当している利用者の一人がどんな具合か尋ねているのを耳にします。長谷川さんは、その人は調子を崩し始めていて、変わろうとする気がないと答えています。」

これについても、たくさんの意見や考えが出されました。メモから少し抜粋します:
  • パワーバランスとか対等性
  • 長谷川さんに何があったのかな。自分が自信を取り戻してきているから結果としてマウントを取るみたいな感じになっちゃってるのかな、そんな気持ちをわかってあげたい気持ちもありつつ。
  • 松本さんの考えるピアサポートの視点ってなんだろう?
  • お金をもらって話をしている側とお金を払って話をしている側と、それって対等でいいの?
  • 利用者の評価をしているのは問題かなぁ。
  • 長谷川さんの声で気持ちを聞いてみたい。
  • お給料をもらって職員の名札をつけているという事自体がパワー。そこに自覚的でいられるかどうか。
  • 自分は組織の中で働いていて、何かを失いかけているのではないかと落ち込んだり。ピアのスーパーバイザーみたいなのがいたらいいのに。
  • 医師が致命的なミスをするのでなければ、ある程度ほっておいても良い状況なのでは。
  • ピアサポーターの役割の記述などが契約書面とかにあるのでは?
  • 上司ではない、スーパーバイザーに相談ができるといい
  • 職場で、ピアサポーターの仕事は、判断をくだすことではなく、当事者の情報を聞き出してほかの専門職に情報として提供することだと言われた。
  • 長谷川さんが医師のやることに寄って行っちゃっているというのが、ピアサポートの役割としてどうなのか。そうじゃないのをみんな求めているはずなのに。
  • 本人のいないところで本人のことを評価して決めるというのはナンセンス。
  • ピアの視点を失いつつあるんじゃないのと言ってしまうと喧嘩がおきるかもしれないので、ピアサポートの視点、大事にしていることなどを行き交わせていければ。
  • 廊下で、というところがとても気になった。
  • ピアだからできることってなんだろう。調子を崩し始めていてどんなところが苦しいとか、同じ苦しみを持つものとして聞けたらいいのかな。
そのまま話をしながら感想です。
  • 今日は自分の立場をすごく考える日だった。
  • 支援員として雇われて、一人で活動しないといけなくて、専門職の人とやらなければいけない人もたくさんいると思う。
  • ピアであるということを忘れちゃいけないと思った。
  • コントロールすることはできないのです。というのが良い。
  • 正しい答えがあるわけではなくて、私はこう思う、といろいろな見え方を出して話し合いができるっていう事自体に意味があると思う。
  • 自分がいない場所で、調子を崩しているって自分のことを言われていたら、こんな悔しいことはないなと思った。
  • 意図的なピアサポートと当事者のサポートは違うなと感じてる。
  • 長谷川さんをむりくり本来の属性に引き戻すのも暴力的。こうもりだよ、って示唆してあげるのがいいかな。
  • 専門知識をもつと分析的になってしまうと自分で感じる。
  • 「変わろうとしていない」と自分のことを決めつけられたことを思い出していた。
  • お金、役割、パワーに自覚的でありたいと思う。自分はピアであることを手放したくないと思っているのだなと改めて感じた。
今回は時間が足りず、でした。また引き続きお話できたらと思いました。
ご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました。

次回:12月 5日(土)15:00-16:30(ZOOMによる開催)
(久々に土曜日午後の開催です!)
東京周辺のIPS勉強会のメーリングリストにzoomのログイン先をお知らせしています。 zoom勉強会にご参加になられたい方でゆっきぃをご存じの方はゆっきぃへ直接、そうでない方は「IPS東京勉強会」 ipstky@gmail.com までご連絡ください。

-私(ゆっきぃ)のひとりごとです-
さまざまな場で、「ピアサポート」の名で活動している方たちがたくさんいること、しかし、雇われている場合には組織の考え方によっては、ピアサポートで大事にしたいことをそこなってしまう行動を求められたりすることもあるのだろうと強く感じました。組織や他の専門職の人には悪気はなくても、視点の異なる文化が続いてきている組織の中で、ピアサポートで、あるいは一人の人間として大事にしたいことを考えるほど、葛藤が大きくなることも多いだろうとも思いました。そういった葛藤や、ピアとしての関係で大事にしたいことってなんだろう、ということなどを話せる場があることは大事だなと思いました。
-ひとりごと終わり-

今日の勉強会の進行↓
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IPS(インテンショナルピアサポート)東京での勉強会
日時:2020年11月8日(日)10:30-12:00 場所:zoom
1.はじまりの確認(チェックイン)
① 呼んで欲しい名前   ② 何に動かされてここに来ましたか?
2.これまでの振り返り
医療・支援サービス機関で働くこと (7巻 p.3~)
ここでは、他の人たちの行動や考えとは違って見えたとしても、ピアサポートをしていくことに焦点を当てます。従来の精神保健サービス(医療や福祉)に関わっていると、いろいろな問題が持ち上がってきます。何がピアサポートによってもたらされるのかに焦点をあて、ピアサポートではない役割に陥らないようにし、私たちは何をしていて、それはどうしてなのかを明確に説明できることが大切です。
3 
村上さん(あなた)は、江川さんとピアスタッフとして関わっています。村上さんと江川さんは何でも話すことが出来ているようです。そしてある日、江川さんは村上さんに「あなたが私と会って話すのは、ここで雇われているからですよね」と言います。村上さんは何と言うでしょうか?
村上さんは、江川さんの“語られていない”ストーリーを聞けるとよいのかもしれません。二人の関係は、この時点まで、とてもうまくいっていたわけなので、江川さんが、パワーの不均衡を感じたのは、何かがあったからなのかもしれません。時に人は、強いつながりを作ると、相手が離れていってしまうのではないかと恐れます。その思い込みに触れずにその周辺を行き来するよりも、そのような感情をテーブルの上に置いてしまったほうが(お互いに見えるように出すほうが)、はるかによいでしょう。
3.医療・支援サービス機関で働くこと 続き (7巻 p.4~)
例4
松本さんと長谷川さんは、地元の精神保健センターで一緒に働き始めてしばらくたちます。お互いに思いを共有し合う関係でいて、組織の中でピアの声を作り上げていることを誇りに思っています。しかし、松本さんは、長谷川さんが自分のことをスタッフと呼び、“自分の担当利用者”について話していることに気付き始め、長谷川さんが、ピアサポートの視点を失いつつあるかもしれないと心配しています。ある日、廊下で、医師が長谷川さんに、長谷川さんの担当している利用者の一人がどんな具合か尋ねているのを耳にします。長谷川さんは、その人は調子を崩し始めていて、変わろうとする気がないと答えています。ここでは何が問題になっていますか?松本さんは何をすべきでしょう? 
 
ここにはいろいろな問題が絡んでいます。第一に、長谷川さんがそこにいない人のことを医師と話をしているという事実は、ピアサポートの核となる価値「私たちに関することを私たちのいないところで行わない」に反しています。第二に、長谷川さんは、長谷川さんの気になっていることについて、医学の枠組みを使って表現しています。これはその利用者の人に影響をもたらすだけでなく、自分の感情に責任をとっておらず、ピアサポートに基づいた話をしていません。
松本さんは、長谷川さんと二人で話をしたいと伝えるか、状況によっては、スーパーバイザーを交えて話をしたいと言うことが出来るかもしれません。松本さんは、廊下でのやり取りが松本さんには居心地の悪い思いがしたこと、長谷川さんがどうしてそのような対応をしたのかを理解したいと言うことが出来るかもしれません。このやり取りが、ピアサポートの知識と価値をどのように反映しているかを聞くことも出来るでしょう。松本さんは、自分が同じように難しい状況に置かれたとき、軌道(ピアサポートの道)から外れてしまったときに、どうやって戻ってきたかについて話すことが出来るかもしれません。松本さんは長谷川さんをコントロールすることはできないのですが(そうすべきでもありません)、大切な学びについて、協力し合う関係を作ることはできます。
4.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?
【今後の予定】 12月:12/5(土)15:00-16:30 ZOOM

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