2021年2月6日(土)ZOOMでのIPS勉強会のご報告

2月6日(土)15:00-16:30にIPS東京勉強会がZOOMで開催されました。

本日も、様々な地域からご参加をありがとうございました。土曜日の夕方ということで、今日もお久しぶりの方や初めての方や、さまざまな地域から20名がご参加くださいました。

前回1月は、電話相談をどんな風に体験しているだろう、というお題で、電話相談にかけたときのことがたくさん出ました。その前回の振り返りとして、

  • 死にたいと言われたときにどんな風に冷静に気持ちをきいてあげられるのかな、って考えてた
  • 電話相談を受けているが、電話ではとても攻撃的だった方が、いざ対面でお会いしたら、ただただ泣いていて。前回の勉強会資料に、電話と対面でそれほど違わないとあったが、やはり違うのではないかと思った

というような思いが出ました。

今回も、電話の続きです。(電話でのピアサポート、とかピアサポート電話相談と訳していますが、IPSのワークブックの原版(シェリーさんの英語版)では、ウォームライン(warmline)と言っています)
ワークブックにあがっているいくつかの例のうち、前回の話もあったので、今日は、「死にたい」という電話がかかってきたときの例をお題としました。
まずは、「死にたい」といった電話がかかってきたときの経験や、かかってきたとしたらどんな風な感じだろう?ということを出し合い、それから、ワークブックの中のやりとりを見ながら話をしました。
  • 魔法の言葉はない。丁寧に話をするようなトーンでやりとりをするしかないかも。
  • 何に動かされて電話をしましたか、って話をしたり?
  • 普段は人に相談しない人が、追い詰められたときだけ電話がかかってくる。電話をかけてくる人の情緒が落ち着いていない状況なので、電話がその人からかかってきても電話に出ることができなくなっちゃう、ということが仲間の中で起きた経験がある。
  • 死にたいって言うことで相手が動揺して動かされてしまい、それをやっているうちにエスカレートしてしまうこともあって、うまく対応できないこともあった。
  • 死にたいって気持ちを聞いて、その人がそう思うとしたらそれでいいのかな、とも思ってしまうかも。あなたの死を見届けて、あなたの思いを引き受けて自分も生きていくよとしか言えないのかなと思ったり。
  • ありがちなのが、死んだらだめだよっていう問題解決型。そうではなくて、死にたいってところを問題化しない、死にたいというところに焦点を当てずに、死にたいという言葉の裏にあるものに対して、自分の経験を出す。
  • 当事者同士の電話相談をずいぶん前からしている。死にたいんですって言われたら、よく言ってくれた、吐き出したかったのはそれなんだな、と思って、私で良かったらおはなししてくれませんか、と。
  • 精神科で働いていて、死にたいって言われたときには、次に会う約束をするとか、死なない約束をするとか、そういう風に読んだり聞いたりしたけれど、それはその場しのぎでしかなくて、相手は話を聞いてもらえたとは全然思えなかったと思う。
  • 死なないって約束してくださいね、って今もある。入院したときに、それを約束してもらえないと入院はできません、と。毎回入院のたびに必ず確認される。どうしてそうなったのか?
  • まずは約束をしてもらって、とりあえず時間をいただいて、その間にゆっくり話を聞く機会をいただくというような意図があったと思うが、約束は、大切な人との約束だから果たそうと思うのであって、一医療者や、その場で会った人と約束することに意味があるのだろうか、とも思う。
  • 今の医療は、医療の契約を守れる人だけが入院できるような。サインをさせたり、念書みたいなのを書いたり。何かあるとインシデントと言ったり、看護をしているのか管理しているのか、と思ってしまったり。
  • 自分は常に自殺願望があって、自殺願望が強いときに、主治医に「またここ(外来)に来てください、待ってます」って言われ続けて生きることができている。
  • 話を聞く側も、その発言を聞いたらびっくりしちゃう、とか、胃がぎゅっとする、とか、自分が何に反応しているのかを感じたり、自分に必要なことを伝えるのも大事なのだろうと思う。
そして話は続きながら、感想も、です。
  • 死にたいって思ったときに、全然知らないのに、死んでほしくないって言う人とかいて、この人には話せないな、って思うし、入院しますか、しか言わない医師とか。
  • 相手の言葉に思いを馳せたり、おそるおそる言葉に出すことで何かが伝わったりわかりあえることがあるのかな、とか。
  • 時間の余裕のなさ。時間の進み方がぐるぐる動いている中で、IPSとかピアサポートとかの、ゆっくりいきましょ、みたいな雰囲気がまず難しい。相談する側も、大きな荷物みたいな相談を持ってきて相手に浴びせる感じの風土とか。そういうところから確認し合ってやっていかないと。
  • 変な共感をするとうそっぽい。うそっぽい共感は何の役にも立たない。
  • 語調を感じ取る。自分の神経を研ぎ澄まして、相手の語調を感じ取る。
  • 電話相談をする人達は死にたいという思いはあったとしても何かしら助けてほしいと伝えたいような気もする。自分が本当に死にたかったとき、自分の中で全てを簡潔させたい思いもあったので電話相談をしようとは思わなかった。
  • 何も言わずに死んでしまう人たちの思いをどう汲み取るか。本人が何も語りたくない以上どうしようもないのかもしれない。「死にたい」と発信してくれたならそれを「受け取らせて頂きました」という事が自分にできる精いっぱいかなと思った。
  • 今日のワークブックに「人のために責任をとる昔の役割に、すぐに陥りかけました。」とあった。自分の思う責任の取り方に悩んでしまうことがある。
ほかにもさまざまなご感想をありがとうございました。
ここに記載した内容で削除したいものがあればいつでもご連絡ください。

次回:2021年3月11日(木)19:30-21:00 ←平日の夜です!

東京周辺のIPS勉強会のメーリングリストにzoomのログイン先をお知らせしています。 zoom勉強会にご参加になられたい方でゆっきぃをご存じの方はゆっきぃへ直接、そうでない方は「IPS東京勉強会」 ipstky@gmail.com までご連絡ください。

-私(ゆっきぃ)のひとりごとです- 
毎回のことですが、90分があっという間で、もっと皆さんのお話を聞きたいという思いがあります。小グループに分かれて話すと話したい人ももっと話せるだろうかと思ったり、でも、参加されているみんなの話を聞き逃したくないと思ったり。 
今日も引き続き「死にたい」の電話がテーマでした。皆さんといろいろ話す中で、行き詰まっている感じを安心して話せる関係があったり、切羽詰まったときにも、自分は今どんな気持ちになっているかに気付いたり、どんな関係でいたいのかに一緒に焦点を当てたり、ができるような間(ま)を思い出せるといいなと思いました。私にとっては、IPSの勉強会で静かな時間や雰囲気に定期的に触れ、そうだった、こういう間が必要だった、と、思い出す練習を繰り返す機会となっているように思います。

今日の勉強会の進行↓
IPS(インテンショナルピアサポート)東京での勉強会
日時:2021年2月6日(土)15:00-16:30 場所:zoom
1.はじまりの確認(チェックイン)
呼んで欲しい名前  ②何に動かされてここに来ましたか?

2.これまでの振り返り  電話でのピアサポート (7巻 p.9~)
電話でのピアサポートが対面のピアサポートと違う点は何でしょう?会う方がピアサポートをやりやすいでしょうか? 違いはあるかもしれませんが、思ったほどの違いはありません。
ここで、IPSの「世界観」の考え方、つまり、ものの見方(どうしてそう思うようになったのか)について理解するために助け合うことに戻ってみましょう。たとえば、他の電話相談を使ったことがあったとしたら、電話でのピアサポートについて、どのような思い込みがあるでしょうか?
サポートを求めて緊急電話窓口に電話をしたら、警察が玄関に来ていたという経験を持つ人が沢山います。命の電話に電話をしたら、ありきたりの返答、「暖かいお風呂に入って、まだつらい思いが続いているようだったら、あとで電話してください」といわれただけだったという人もいるでしょう。よく経験することは、積極的な傾聴(最もいい場合)、あるいはアドバイスや強制ということさえあります。
つまり、相互的な、双方向の関係を電話相談で経験した人はあまりいないということです。これまでの電話相談で経験してきたかもしれないことを考えることは、電話でのピアサポートの出会いがどのようなものであるかを考えるのに役立つでしょう。
もし電話をしてきた人がピアサポートについて何も知らなければ、電話の始めに違いを説明することは重要です。(会話が余り先に進む前に)ピアサポートについて相手の人が知っていることを尋ね、この電話相談に何を期待しているのかを聞くとよいかもしれません。
①電話相談でどのようなことを経験してきた可能性があるでしょう?

3.電話でのピアサポート [ウォームライン: warmline](7巻 p.9~)
電話をしてきた人が、ピアサポートについて何も知らなかったとしたら、ピアサポート電話相談をどのように説明しますか? 
ピアサポートについて経験のない人には、この種の電話サポートは、問題を解決したり、コントロールするものではないことを説明するかもしれません。個人の経験に基づくアドバイスさえしません。そうではなく、ここは、人々がお互いに話し、お互いにとってうまくいきそうなことを見つけ出し、お互いから学ぶ場です。単に人々の対処を助けるだけではなく、考えることを促すためのものです。行き詰った感じがするときや、古いパターンを破りたいと思っているときにも、ここに電話してほしいと付け加えてもよいでしょう。
ワークブックであがっている例

死にたいと伝える電話 
この状況は、対面しているときと確かに異なります。電話をしている人は、ピアプログラムについてよく知らないかもしれないし、あなたはその人について何も知らないかもしれず、その人はすでに何かしているかもしれません。もしくは、とてもつらい感情について、ただ、話したいだけなのかもしれません。 

例: 
横田さんはピア電話相談で働いていて電話を受けます。秋元さん(ピアサポートは初めての人)が電話をしてきました。しばらく雑談をして、横田さんはピア電話相談について少し説明をします。しかしそれほど長く話す前に、秋元さんは、ここは精神保健センターのようでなくてよかったと言います。そこは、彼が死にたいと感じているとき、いつでも警察を呼ぶからと言います。 

横田さん:その人たちは自殺したいという気持ちについて、秋元さんと話そうとせず、ただ、警察を呼ぶのですか?秋元さんは、そうではなくて、彼らにどうして欲しいのですか? 
秋元さん:ただ話を聞いてくれたらと思います。たった一度、大量服薬しただけなのに。 
横田さん:秋元さんが今「たった一度大量服薬しただけなのに」と言ったとき、胃が縮まったように感じました。それで、私は人のために責任をとる昔の役割に、すぐに陥りかけました。それはこの電話で私が望んでいることではないので、お互いのためになるようにこのことを話すには、どうしたらいいでしょうか? 
秋元さん:そうですね、そうしようと思っているわけじゃなく、ただ、それを話す場所が必要だというだけで 
横田さん:私としては、強い感情について話をするために自殺の言葉を使うようになったのかもしれない、というあたりの話が出来るといいけど、あなたにとってはどうですか? 
秋元さん:そういうふうに考えたことがなかったなあ。

4.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?

本日の勉強会で、当事者同士による電話相談「ポプリ電話相談 https://saitama-popuri.jimdofree.com/電話相談/」のご紹介がありました。

勉強会でのやりとりの抜粋を報告しています。ご自身の発言と思われることへの削除や修正をされたい方はいつでもご連絡ください。