2016年1月24日(日)の勉強会のご報告

2016年はじめての東京のIPS勉強会が1月24日(日)にありました。
晴れていて、風は冷たいけれど、空が青く、高く、吸い込まれてしまいそうな空でした。

チェックインをして、前回の振り返りです。
前回の振り返りは、「死にたい」という思いを聞くこと、言うことなどについて。
死にたい、というと責められたり、何か残念な目に遭った人が不注意と怒られたり。
どんな思いもどのような体験も、責められたりせず、安心して話せたらいいな、と思いました。

休憩と静けさを味わう時間を合わせて長めにとって、後半はテキストです。

後半のテキスト、今回は
「開かれた対話」 あなた自身のボタンが押されたとき (4巻p.20-21)
です。

あなたがどんな人であれ、ピアサポートがどれほどうまくても、ときに、
あなたの過去が邪魔をして、あなた自身が強い感情のなかにいると気が付くときが
あるでしょう。自分には荷が重過ぎる、身を引くべきだと思うときがあると思います。
一本、なぜ、今そう思うのか、それが自分の成長と学びにとって何を意味しているのかに
興味を持つかもしれません。

自分の体の中で何がおきているのかに気付き、呼吸に注意を向け、
何よりも、自分に何が起きているのか、声に出して言ってみてください。

ここに例を挙げます。

馬場さんは、つらい思いについてあなたに話します。この会話で馬場さんは、
彼女が経験した性的な虐待について、かなり生々しくあなたに語ります。
あなたは、昔のようなパニックを感じ始めます。息が止まり、自分の虐待の経験が
よみがえってくるのを感じます。馬場さんの話を聞いていたいと思うのですが、
ますますそこから遠のいていく感じがしています。

馬場さんは、あなたが何も言わないことに気が付き、上の空みたいだと思います。
彼女は、ますます気分が悪くなり、怒りだしてこう言います。
「誰も、本当に私の話を聞きたいとは思わないのだわ、私は自分が毒みたいに感じる!
それが虐待した人が私にしたことなのよ!」

あなたはなんと言いますか?

<中略>

時間をとってください。呼吸をして。反応するのではなく、応答してください。
多分、次のようなことを言うことができるでしょう。

「わあ、馬場さん。私があなたのことを聞いていないと思った時に、どれほどいやな気が
したかわかります!私はあなたのことを毒だなんて思っていません。
事実、あなたはとても勇気があると思った。
私に起きていたのは、自分の虐待の経験を思い出して、集中できなくて、
何も言えなかったのです。正直に言うと、私もまだ、身体がかたくなって、
感情が高ぶるのだとわかりました。少し、違う話をしてもいいですか。
私ができそうだと感じたら、馬場さんの話を聞きたいと思うけれど、
今言えることは、私のつらい思いが蘇り始めたら、それを伝えて、
それでどうするかは一緒に考えることができたらいいということ。
馬場さんはどう思います?」

このように、あなたは会話を始め、双方が必要としていることを交渉し、
昔のやり取りのように、「あなたが私の引き金になっている」というようなことに
陥らないようにします(それは、ここでも、犠牲者を責めていることになります)。

上記の文章を読んで自由に話しました。

  • 自分の「体の中」で何が起きているか(心の中ではなく)に気付いたり意識できるときは余裕があるとき。、
  • 深呼吸をすると楽になる。余裕が無い時は息してなかったりする。
  • 「それはつらかったね」と返す言葉とか、文字で読むと、人ごとのような感じもするけれど、面と向かって心から言っているのは全然違う。
  • 冷静な第三者がいること大事なのでは?
  • 自分の陥っているパターンに気付くこと、とても難しい。問題だとすぐに感じるようなパターンはまだしも、助ける、アドバイスする、というパターンに気付くのはとても難しい。
  • 相手が何を求めているか、言葉だけではわからない。相手の気持を汲む努力は必要。
  • 後から何か思った時に「もしかしてこういうことだった?」と聞ける関係は良いと思う。
  • 何を求めているのか、自分でもわからないことたくさんある。
  • 会社の論理、人としての論理とも少し違うこともあって、ずっと会社とか組織の中でいた人がそこから離れても、自分の文化や価値観を変えるのは大変。
  • 誰も変わる必要はないのではないか。価値観はみんな違うということさえわかっていれば。
  • 価値観をお互い知りあえて、その価値観を尊重しあえたら良いのでは。
  • 価値観の分け合い方にも価値観があって、「多様性を認め合う」というものも価値観の一つなのでは。

など、さまざまに広がっていく話でした。
価値観の共有の仕方自体も価値観であるということが心に残りました。
自分の価値観に気付くのってなかなか難しくて、自分の価値観と違うものに触れて、
はじめて、ああ、これは自分のものの見方だったのか、と気付くんだなぁ、と、
文化とか価値観や常識などについて思いました。

【次回東京のIPS勉強会】
日時:2016年2月14日(日)10:00~12:00
場所:東京大学医学部3号館S102

(次々回は3月19日(土)15-17時を予定しております)

2015年12月20日(日)勉強会のご報告

2015年12月20日(日)10-12に2015年最後の勉強会は11名の参加、そして、同じ部屋で、ささやかな忘年会がありました。

前半は、チェックインのあと、前回の話題の振り返りをして、

外でも中でも好きなところで、“静かな時間”を過ごしました。


 ~静かな時間を味わう~
  • 息を吸って、息を吸っていることに気付く。息を吐いて、息を吐いていることに気付く。ありのままの呼吸を感じ取る。
  • 自分の心の様子や思い、身体を素直なやさしいまなざしで見つめる。
後半は、前回からの続きで「学習した反応としての自殺傾向」でした。

以下、少し長いですが、当日の資料にあった、4巻_p.17~20抜粋の内容です。
  • さて、リスクの共有と安全・安心を再定義することについて考えるところに戻ってみましょう。自殺という言葉をコントロールの言葉、ある種の安全の言葉として考えると、それが人々にとって、どれほど重要なものであるかがわかり始めます。最も避けたいのは、誰かのコントロールと安全・安心の感覚を脅かすことです。ですから、ピアサポートの会話では、その人がどのようにして、そう思うようになったのかについて敬意を払う必要があります。

    可能性のある道具には、次のようなものがあります。
    · 自殺について考えることが、つらい状況への対応・反応になってから、どのくらいの期間になるかを尋ねる。
    ·  死にたい気がするといったときに、あなたにどのように対応してもらいたいかについて尋ねる。
    ·  私たちが診断を必要だと感じると、関係がどうなるかについて話し合う。
    ·  あなたはどのように感じ、何が必要かを話す。自分のパートを引き受けてください。

    ✍もしあなたが自殺について考えたことがあったとして、それを人に話したとき、その人たちからあなたが本当に必要としていたのは、どのようなことだったのでしょうか?
    ピアサポートの関係における、リスクの共有について話してきましたが、人からの助けを求めることも、時にとても大切です。(これは、その人に内緒で話すことを意味していません!)いつ、どのように、誰に、助けを求めればよいのでしょうか?

    いつ:正確には、正しいとき、というのがあるわけではないのですが、過剰な反応も、反応の欠如も避けたいことは確かです。どの状況、どの関係もユニークです。大切なのは、一人で抱え込まないことです。今あなたにはない視野を他の人が持っているかもしれません。ピアサポートの実践で出来る限りのことをしてきたかが問題になります。
    (中略)
    あなたが自分の最低限のラインをわかっていて、深刻な挑戦的な状況にどのように反応しそうかを知っていたら、これが強制的な状況に陥る必要は決してないはずです。しかし、不幸なことに、そうなってしまう場合があるかもしれません。覚えておいてください。そうした出来事のあとにも、関係の中ですることが、まだ、とても沢山あります。時期がきたら、関わったすべての人と(第三者も含め)それを振り返り、話しあってください。違った道筋にはどのようものがあったかを一緒に考えてください。どちらもが引きずっている感情について、そして、軌道に戻るために関係の中で何をすべきだろうかをよく話しあうことを忘れないでください。

    ✍1.誰かがあなたをコントロールすることになった、あなたが経験したとても挑戦的な状況について考えてください。何があったのですか?誰かにコントロールされるのを防ぐためにどうすることが出来たでしょか?

    ✍2.あなたが交渉できた、するつもりだった、別の挑戦的な状況について考えてください。その状況についてのあなたの考え方が、どのように変わりましたか?
文章を読んで、おのおの思ったところを話しました。

・「死にたい」と口にすることと、実際に行動するのでは、開きがあると思った。
・閉塞感があるときや、解放されたいと思っている時に、死にたいと思ったことがある。
・1回、現生はリセットしたい、消えたいと思ったことがあった。
・死にたくなったときに、環境を変えたいと心から思っていることもあった。
・自殺に向かっている時は、エネルギーを使っている。それを話すということもエネルギーを使う。
・死について話をすると過剰に心配されることもある。
・死について話をしにくいことが多いが、死をタブー視しなくていいんじゃないか。嬉しいことや悲しいことがある一つとして、死について話題にして話をしたいときもある。
・犬にだと、どんなことも話をしやすい。
・ネコ的に、みんなふわっとしていたら、いろんなことが話やすいかもしれない。

「死」という言葉の裏には、いろいろな想いがあると思いました。
どんな話も、したいときにはできて、無理に聞かれることも過剰に心配されることもなく、そっといられるような場所があるといいなと思いました。

次回:2016年1月24日(日)10:00~12:00
場所:東京大学医学部3号館S102
(次々回:2月14日(日)10時~予定しています)


忘年会の写真のご紹介