2024年8月20日(火)夜のIPS勉強会(ZOOM)のご報告

8月20日(火)19時30分~21時に、東京IPS勉強会がオンライン(ZOOM)で開催されました。この日は19名での勉強会でした。

毎回同様、呼ばれたい名前と何に動かされてここに来たかを伝え合い、「IPS」で大切にしている4つのこと:(1)つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと について話しました。

前回までの振り返りということで、「ピアサポートとはそもそもなんなのか?」のこれまでに出てきた項目をざっと振り返りました。

  • 「大丈夫な関係」自分も相手も大丈夫な関係性。相手を尊重するがゆえに自分が我慢してしまう関係は大丈夫じゃない
  • 「病名をよりどころにしていない」大事なんじゃないか。気になった。
  • 常にトラウマに配慮してても、どこかで良い方向に行って欲しいって思っちゃって、あるがままを見つめられているのかなって。自分が急ぎすぎているかもしれないし。一歩立ち止まって、目の前の人のそのままを一旦受け止めるっていう作業が大事なんじゃないかなと思ってる。スピード感を求められる時に、目の前の人との関係が難しくなるときがある。
  • ピアサポートとはそもそもなんなのか?病名をよりどころにしない、を強調しないと、なんとか病の患者さん、とか。そこにフォーカスしがち。お互いが人として学び、成長する、っていうことが大事。
  • 生きてく限り、選択する、選んでく。そういう場でピアサポートの関係、ものの見方を再検討するようお互いを励ます、って難しい
  • ものの見方が一致しないと違和感、ざらつき、ちょっと嫌な感じがしたりすることがある。やり方が気に入らないとかそんなときがある。むしろそれを成長の糧にする
  • セッションが音楽に聞こえてよかった

などなどさまざまな話が出てきました。
今日のテーマは、「ピアサポートは意図をもったものです」というものです。健康的な関係、と言うことも出てきました。

  • 健康的な関係?
  • 不健康じゃない 広い意味;お互いが平行線 みたいな関係性;お互いに敬意を感じる
  • お互いに嫌な感じがしない;建設的
  • 健康的な関係は難しい。でもお互いに誰かにしがみつきたいで保っている関係がある。あちこちで追い出された経験を持つもの同士だから、頑張って相手の話を聞こうとする関係。
  • 健康的な行動は早く寝る、とか。IPSみたいな時間を増やすと夜遅くまで お酒飲もうぜ、とかギャンブルしようぜ、とかじゃなくて 長くは続けたくない生活に繋がるような関係は減ってくる
そんな話をしたあとに、二人組になって、聞く・感じる演習をしました。
演習の感想や今日の勉強会の感想です↓
  • 傾聴がすごく難しい。黙って聞いていられない。話してる
  • 数分で相手の見える世界を理解するのは、自分の力量では難しそうだが、姿勢は大事にしたい。
  • 黙って聞いて相手を理解するっていう姿勢は重要なんだろうな
  • こたえがあるわけではないので、聞いてもらって、話してるだけで楽になった。
  • 目の前の相手は自分のことを理解しようとしてくれているんだ、という前提があるので、普段だったらいわないような話も、安心安全だった
  • 話している時には、相手の人が基本黙っているというのは心地が良い なんでかはちょっとわからないのだが。話していて静まる、落ち着いてくるというところを味わった
  • 黙って聞く方も、世界観が伝わって、よい体験だった。効果的な会話。
  • 楽になった。いろんなしがらみの中にいるから大人の事情で話せないこととかも、ピアとの中では話せる。パワーから脱却する。いろんな力が支援関係でも友達関係でもどこでもある。そういうところから抜け出すことが、もしかしたら可能なのかなと。
  • 話す勇気みたいなのと、話して傷つくときのリスクみたいなのも。失敗するときもある。力のある人と力をシェアするというのが自分の一番の課題
  • 数分では理解できないのはそうだが、100年あったとしても理解はできない。でもこの人は聞いてくれない、この人には話したくない、というのはすぐにわかる
  • 理解はできない、難しいけれど、知りたいという気持ち
  • 相手の困りごととか弱さとかしんどいことを聞くと自分がやさしくなる感覚がある。不思議。人の話を黙って聞くと、やさしくなれる自分がいる。それがすごくうれしい。
  • IPSの場にいる人の感覚ってすごくいい。無心に聞けた。フィルターをなくして無心に聞けた。
  • 聞いてもらったときに、医療として治療しようとか治そうというものが感じられず、ただ聞いてくれて、自分の言葉が流れていく、安心して話せる感覚。「ストーリーから抜け出す」自分の悩みを話すことで自分だけではできないことができた
  • こういう空間をどう作るか、枠組みを作っていくというのが大事なことなんだなと思った。回復の空間をどうやって作っていけるか。
  • 話を聞くときって、共感、共感的理解 相手のことをわかろうとする、相手と世界観や価値観は違うかもしれないけれど、それを理解しようとする、それで相手も信用してくれる。話して元気になっていく。価値観や世界観も、良い悪いもない、正解もない
  • こんな風に相手のことを気遣わずに、好きなように話したのってすごく久しぶり。日常生活って、相手が話し終われって思ってるだろうな、とか思いながら。今日は6分間があっという間で。こんな風に話をするってことがなかった。黙っているけど寄り添ってもらってたのかなっていう体験ができた
  • 聞いて頂く場のありがたさが身に染みる体験ができた
  • 人の話を聴く時に、大切なことを改めて考える時間だった
  • 先入観をはずすというワーク 理解するプロセスでなじんでくる フィルターを一回はずす。私たちは先入観にいかにとらわれているか。
  • 支援者はフィルターをつけていく、ピアはフィルターをはずしていく。フィルターをかけるのは医師、はずすのは自分。
  • バイアスのかかってないところで自分の心配事を話す、こたえがないってわかっていても聞いてもらうことは楽だなと体験できた。ジャッジしないというのを大切にしている。整理がつく
  • 自分は安全圏を作りながら話してることが多い。誰と話すかも分からない状況の中で話をしてみる、ということが、ほかのところでもなんとか話せるかもしれないという感じに自分がちょっとなった。自分でもびっくり。変化を感じた気もする。抜け出ても抜け出なくてもどちらでもいい、自分は自由なんだなと
  • 居心地が悪いって言える関係性というのがとても大事なはずなのになぜ言えないのか
今回は、ZOOMでしたが、短時間ながら二人組の演習を入れてみました(二人組のワークには入らない方は休憩していてもらいました)。
ご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました!

 【次回以降の勉強会予定】

9月21日(土)15時~17時(対面)
10月19日(土)13時~14:30(オンライン:ZOOM)
11月に拡大勉強会(東京大学医学部3号館)

ゆっきぃのひとりごと:平日の夜の開催が、年に一度くらいあります。夏の夜の対話、静かな良い時間でした。静かに人と話す。こんなこと言ってよいかな、と思うことも話してみようと思えるくらい安全を感じられる場で話す、って私にとって大事な時間なんだな、と思いました。そんな時間を、良い時間と思う仲間がいることがとてもうれしいです。

8/20の勉強会の資料内容です。

IPS(インテンショナルピアサポート=意図的なピアサポート)東京での勉強会
日時:2024年8月20日(火)19:30-20:00 場所:オンライン(ZOOM)
1.はじまりの確認(チェックイン)
呼んで欲しい名前 ②何に動かされてここに来ましたか?
2.意図的なピアサポート(IPS)で学ぼうとしている関係と、この場でしたいこと
(IPSでの)ピアサポートは、お互いが学び成長するのに役立つような関わりをします。
「IPS」で大切だと考えている4つのこと:
(1) つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと
3.前回までの振り返り(前回は2024年7月21日(日)10-12時 対面)
前回:ピアサポートとはそもそもなんなのか?
お互いが学び成長するのに役立つような関わりをすること
4.ピアサポートとはそもそもなんなのか?(1巻 p.7~ ) (2月からの続き)
私たちがピアサポートと呼んでいることは何なのでしょう?誰かの面倒をみる?治療を提供?違います。
お互いが学び成長するのに役立つような関わりをすることです。 これまでの項目:(1)提供することと受け取ること;(2)病名をよりどころにしていない;(3)ピアサポートの関係では、ものの見方(どのようにしてそう思うようになったのか)を再検討するようお互いを励ます;(4)ピアとの間で大丈夫な関係を築くだけでなく、この世の中での振る舞い方をどんな風に学んできたのか考察する;(5)トラウマの経験を考慮したピアサポート

(6)ピアサポートは意図をもったものです
意図を持ったというのは、特定の目的をもって関係を結んでいるということです。ピアサポートでは、健康的な関係であることを前提にしているのですが、そこには、特定の意図があります。
この意図とは、双方が、現在のストーリーから抜け出す助けになるようなやり方で、意識的にコミュニケーションを行うということです。
私たちが聞いたり、話したりすることは、“私たちの物事の見方(どのようにしてそう思うようになったのか)”に由来するということを常に意識して、コミュニケーションをします。会話の中で、自分が信じている真実から一歩引いて、自分にとっての真実を保ちながら、他の人の真実にも深く心を開くということです。このような対話をしているときには、どちらか一方だけでは知り得なかったようなやり方で、物事を見、聞き、知る可能性を、どちらもが得ることになります。

♪聞く演習・感じる演習
Aさん役:何か自分の困りごと・心配を話す。感覚を味わう。
Bさん役:Aさんの話を聞く。(相手に見える世界を理解しようとしながら)。黙って聞くだけでよい。(相手の中で何が起きているか聞いてもよい)
5.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?
ーー
IPS勉強会ブログに勉強会でのやりとりの抜粋を報告しています。個人を特定する情報は載せません。ご自身の発言と思われることへの削除や修正をされたい方はいつでもご連絡ください。

2024年7月21日(日)勉強会(対面)のご報告

 7月21日(日)10時~12時に、東京IPS勉強会が対面で開催されました。この日は13名での勉強会でした。

いつものように、呼ばれたい名前と何に動かされてここに来たかを伝え合い、「IPS」で大切だと考えている4つのこと:(1)つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと について話しました。

前回の振り返りやIPSについて思うことを話し、今日のお題「トラウマの経験を考慮したピアサポート」についてのお話しになりました。

IPSは、そもそもシェリーミードさんが、トラウマの経験に配慮したピアサポート(Trauma Informed Peer Support)と当初からずっと言ってらして、しかしその頃のトラウマインフォームドケアの提唱をされていた組織等からのいろいろによりトラウマインフォームドと名乗ることは断念したとお聞きしたことがありました。しかしそのように名乗らなかったとしても、IPSがその人のこれまでの経験に意識を受けるものであって、トラウマの経験を考慮したものであることは感じられていました。

  • 何があったのですか?
  • 手が上にあがると叩かれると思って逃げちゃう
  • 以前は、家族を怒らせているのではないか、何か悪いことしたかな?とか、嫌われたらいやだな、とか、そんな思いがある
  • 反応モードに入りやすい
  • 不機嫌な人を見たときに思ってるしまう認知パターン
  • いつも怒鳴ってる人も本人は怒鳴っているつもりはなかったり

等の話しをしたあと、二人組になって、それぞれの困りごとの話しのあとに続ける言葉を2パターンやってみてどのように違うかを体験するということをしました。その二つのパターンは、①どうしちゃったんですか?具合が悪いんですか? ②何かあったんですか? です。

やってみた後の感想としては

  • 「何があったの?」と聞かれることで外部に視野が向く
  • 深くまでいける
  • 「あなたの中で起こっていることはなんですか?」と聞いてくれたので、自分の中のこととその背景も話すことができた。感情の言語化は難しいけれど、聞いてくれた
  • 「何があったんですか?」はよく聞かれる言葉なので、また診断がはじまった、と思う
  • 「どうしちゃったんですか?」は責めてる、「何かあった?」は理由を聞いている
  • どこが悪いの?はジャッジする言葉。何があったの?も言い方だったり、醸し出される感覚だったり、言葉以上に表情や感じで違うと思う
  • お互いにゆっくり話すと良い。早く話すと間隔が狭まる
  • 安心できる場所だからできたこと。こういう環境をつくっていけるとよい。関係性が前提にある
  • 何を言ったとしてもクライアントを傷つける前提でいろいろ考える
  • 自分とのつながりが大事。私の気持ちを大事にする。相手の世界観を大切にしつつ、でも自分の言えなくなっていることにも気付く
  • 私のことを理解しようとしてくれる誰か一人がいてくれること

などを話しました。二人組で実際に話してみるというのはさまざまな気づきがあるなと感じました。ご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました!

【次回以降の勉強会予定】
8月20日(火)19時30分~21時(ZOOM)
9月21日(土)15時~17時 対面(東京大学医学部3号館)
11月に拡大勉強会(東京大学医学部3号館)

ゆっきぃのひとりごと:トラウマの影響に配慮するというのは、おそらく、なんという言葉を使うかというよりも、相手へのまなざし、人にはいろいろな事情がある、さまざまな経験をしてきて、人は自分の経験からさまざまな対処をしている、ということへの敬意が大事なのかな、と思いました。そしてそのように感じるために、さまざまな経験について話をしたり聞いたりすることは、まだ知らない相手の経験への敬意の幅が広がるような気がしました。

7/21の勉強会の資料内容です。

IPS(インテンショナルピアサポート=意図的なピアサポート)東京での勉強会
日時:2024年7月21日(日)10:00-12:00 場所:東京大学医学部3号館1階S102
1.はじまりの確認(チェックイン)
呼んで欲しい名前 ②何に動かされてここに来ましたか?
2.意図的なピアサポート(IPS)で学ぼうとしている関係と、この場でしたいこと
(IPSでの)ピアサポートは、お互いが学び成長するのに役立つような関わりをします。
「IPS」で大切だと考えている4つのこと:
(1) つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと
3.前回までの振り返り(前回は2024年6月16日(日)ZOOM)
前回:ピアサポートとはそもそもなんなのか?
お互いが学び成長するのに役立つような関わりをすること
4.ピアサポートとはそもそもなんなのか?(1巻 p.7~ ) (2月からの続き)
私たちがピアサポートと呼んでいることは何なのでしょう?誰かの面倒をみること?治療を提供?違います。
お互いが学び成長するのに役立つような関わりをすることです。
(1)提供することと受け取ること;(2)病名をよりどころにしていません;(3)ピアサポートの関係では、ものの
見方(どのようにしてそう思うようになったのか)を再検討するようにお互いを励まします;(4)ピアとの間で大丈夫な関係を築くだけでなく、この世の中での振る舞い方をどんな風に学んできたのか考察する
(5)これはトラウマの経験を考慮したピアサポートです
トラウマの経験を視野に入れたピアサポート(トラウマインフォームドなピアサポート)は、他のいくつかのピアサポートのモデルとは異なっています。ここでは、「何があったのですか?」という根本的な問いかけをすることから始めます。従来の「どこが悪いのですか?」という問いではなく。このように視点を移すと、お互いからとても多くのことを学ぶことが出来ます。これについては、ワークブックの後半で詳しくお話します。
強い感情があるときや、行動(遅刻した、言葉が出ないなど)が出たときに、「どうしちゃったの?」と言われるのと「何があったの?」と言われるのとで、あなたの回答や思い起こされることに違いはありますか?
♪聞く演習・感じる演習
Aさん役:何か自分の困りごと・心配を話す。2回。Bさんの問いかけに適宜こたえる。感覚を味わう。
Bさん役:Aさんの話を受けて、①どうしちゃったんですか?(具合が悪いんですか?)と聞く。しばらく聞き続けて区切りの良いところで一旦会話を終える。もう一度、Aさんに最初から困りごとを話してもらい、②何があったんですか?と聞く。(相手に見える世界を理解しようとしながら)。
5.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?
ーー
IPS勉強会ブログに勉強会でのやりとりの抜粋を報告しています。個人を特定する情報は載せません。ご自身の発言と思われることへの削除や修正をされたい方はいつでもご連絡ください。