2月15日(土)14:00-16:00に、東京IPS勉強会が開催されました。この日は9名での勉強会でした。
毎回同様、呼ばれたい名前と何に動かされてここに来たかを話します。
その後で、意図的なピアサポートの意図とは「お互いが学び、成長するようにしようとしている」ということと、「IPS」で大切にしている4つのこと:(1)つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと についてと、IPSの3つの原則、助けから学びへ、個人から関係へ、恐れから希望へのお話がありました。
助けから学びへ、とは、相手の人が自身を知ることを助ける、それがIPSなのでは。そして、IPSやこの勉強会でしようとしていることは、そんな場を作ることに貢献することなのでは、というお話です。
その際に、お互いに理解するために助け合う、そこで自分の思ったことや感じたことを言うのはとても大事なのだけれど、それをなかなか言えなかったり、過去に否定されたことを思い出して発言できない人もいる。そんなときにどうしたら言いやすいような、そんな場になるのだろう、とのことについて
- 自分は過去に、まわりが全部正しいと思っていた。自分が言うことなんてダメだと思っていた。意見をもたないのが安全だと思っていた
- 頑張らなくていい、と言われたときに、その意味がわからなかった。自分が頑張っていたことを自覚できていなかったから。どうしたいの?と聞かれても、相手はどうして欲しいと思っているのだろう?と思っていた
- 意見を言っちゃいけないと思っていた。自分の意見を押し殺してばかりいたので意見をもたないようになっていた。自分は意見を言っていいといわれて自分が意見をもっていなかったことに気付いた
- 誰かの近くでその人を支援していたりすると、医療者も家族も本人のことを知っていると思ってしまう。そのような状況では本人も意見の持ちようもない
というようなことが出されました。
この日のテーマは「相互性:共に学び、成長する過程として助けをとらえ直すこと」です。その中で、IPSのワークブックに載っているパット・ディーガンさんのウェブサイトからの抜粋を皆で読み、役割を演じるように社会化されることについて話し合いました。
そして、その後、二人組での聞く演習・感じる演習をしました。
勉強会の終了時には以下のような感想がありました。
- 演習を何回もやって、話すやり方がわかってきた気がする。具体的な場面を思い浮かべてそのときにどんな風に感じていたのかを思い出してみる、深く振り返るのがよさそうだと感じている
- 自分の体験を振り返ったり、思いを語れる場、そんな空間をたくさん作っていくことが大事なのだと感じた
- 7分(の演習の時間)が難しい。尻切れトンボで終わりたくない気持ちや、時間が余る感じとか
- 皆さんと話しをできて、自分の課題に向き合うことができるかも
- 過去の自分の存在は不確かだった。生きているか死んでいるかわからない自分がいた。でもあの頃の自分がいるから今の自分があるんだなと思う
- いつから人から変に思われることを気にするようになったんだろう
- グループができるとそれぞれの役割ができてしまって違う考え方をするのが難しくなることもある。今日の例は学校でそうだったと感じた
- アメリカで、患者という言葉ではなくコンシューマーという言葉が使われる様になった頃の文章で、消費者、っていう言葉には、ただ消費しているだけで相互に貢献するとか双方向性は感じられないというところは、確かにそうだな、と思った。いろいろな言葉で受け取られることというのも興味深いなと思った
- 社会化について。精神科領域では、グループホームとか、就労のところとか、治療をする場ではないのに、調子がどうかと聞かれるのは、人として互いを気にかける以上の精神科的な何かがありそうだと気付いた
ご参加くださった皆様、ありがとうございました!
【次回以降の勉強会予定】
3月16日(日)10時~11:30(オンライン:ZOOM)
ゆっきぃのひとりごと:今日もありがとうございました。今日皆さんとお話をする中で、意見を持たない方が安全と思っていたという話しを聞いて、私はこれまで生きてくる中で、意見はみんなも自分も言った方がよい、互いの声は聴かれるべきだ、と思う機会を重ねてきたのだなと感じました。それは、私の重ねてきた経験とは異なる人の経験を聞いたからこそ気付いたことだとも思いました。IPSの世界観や相互性、どれも重なり合っているテーマで、お互いに、自分の世界観に気付いていく、そんなことをしようとしているのだな、と思いましたし、IPSの勉強会でそんな時間をもつことができてとてもうれしいです。
2/15の勉強会の資料内容です。
IPS(インテンショナルピアサポート=意図的なピアサポート)東京での勉強会
日時:2025年2月15日(土)14:00-16:00 場所:東京大学医学部3号館1階S102
1.はじまりの確認(チェックイン)
① 呼んで欲しい名前 ②何に動かされてここに来ましたか?
2.意図的なピアサポート(IPS)で学ぼうとしている関係と、この場でしたいこと
(IPSでの)ピアサポートは、お互いが学び成長するのに役立つような関わりをします。
「IPS」でピアサポートを達成するために大切だと考えている4つのこと:
(1) つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと
3.前回までの振り返り(前回は2024年10月19日(土)ZOOM)前回:ピアサポートの任務
4.ピアサポートの任務(ピアサポートですること)(1巻 p.12~ )
任務1 つながり・通じ合う感覚:これがピアサポートの核心です。
任務2 世界観:ものの見方(どのようにしてそう思うようになったのか)を理解するよう、お互いに助けあう
任務3 相互性:助けるということを、ともに学び、ともに成長する過程として、とらえ直す
任務4 向かうこと:望まないことを避けるためではなく、望むことに向かって進むよう、お互いに助けあう
任務3:相互性:ともに学び、成長する過程として、「助け」をとらえ直すこと(Mutuality)
「ピアサポートは相互的で持ちつ持たれつの関係です。これは、長い間、患者あるいは利用者の立場を取ってきた人にとって、とても癒されるものです。“よい”精神疾患患者の役割を演じるように社会化され(慣れさせられ)、つまり、“私”に関することだけに没頭するようになっているからです。自分に没頭するように社会化されることは、病院で看護師に、お通じはあったか、夜眠れたかなどを毎日、聞かれることから始まります。「自分のことに目を向ける」ことは、それから何年にも渡って、ケアマネージャー、セラピスト、グループホームの世話人、就労支援者らのすべてからそれぞれに、“調子はどう?”と聞かれることで、引き継がれていきます。“調子はどう?”というのは通常の社会の会話では挨拶の決まり文句ですが、精神科領域の会話では、利用者はその問いを真に受けて、“自分”について、さらにさらけ出して答えることが求められます。そして、たいていの場では、利用者はお互いに助けあったり、誰かを助けたりすることは奨励されていません。そう考えると、今人気の“コンシューマー(消費者)”という呼び方はぴったりです。何かをお返しする可能性のかけらもなく、大きな口をあけてひたすら消費するイメージが思い浮かびます。
自分中心、自分に没頭すること、消費者であることへの社会化は、自分には他の人に提供できる何かがあると気付く機会を多くの人から奪っています。関係がいかに癒しになりうるかという別の理由は、この医原性(医療が原因となる)の傷を負っているからです。必要とし必要とされる、気遣い気遣われる、受け取ることが出来、与えることが出来ると知ることは癒しになります。」(パット・ディーガンのウェブサイトからの抜粋:https://www.patdeegan.com/blog/relationships-can-heal)
どのように“援助”を受けてきたかが、自分たちの中にも受け継がれている可能性に、しっかりと注意を払う必要があります。たとえば、いろんな人が、私たちのために何かをすることで援助をしていると思ったり、私たちは不安定だと思い込んでいたとしたら、私たちも、助けとはそういうこと(何かをしてあげること)だと思うかもしれません。
♪聞く演習・感じる演習
Aさん役:①自分が助けられる人/助ける人の役割をとるように慣れさせられてきたかも?と思い当たることはありますか? ②自分にはほかの人に提供できる何かがあると気づいたことはありますか? ①または②、あるいは①②両方について、思い浮かぶことがあればお話しください。沈黙でもOK。
Bさん役:Aさんの話を、Aさんに見える世界を理解しようとしながら聞く。黙って聞くだけでよい。
5.勉強会の感想:今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?
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IPS勉強会ブログに勉強会でのやりとりの抜粋を報告しています。個人を特定する情報は載せません。ご自身の発言と思われることへの削除や修正をされたい方はいつでもご連絡ください。
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