2020年10月11日(日)zoomでのIPS勉強会のご報告

2020年10月11日(日)10:30-12時にIPS東京勉強会をzoomで開催しました。

本日も、東京の方が多数ではありつつも、北海道から九州までさまざまな地域から13名の方がご参加くださいました。

ここ何ヶ月かは、IPSのワークブックの7巻の、精神保健の援助機関で働いていると生じるかもしれない状況の例を題材に、ピアサポートについて考えています。

まずは先月の振り返りで「向井さんは、自宅で暮らす精神疾患を有する方への訪問支援チームで、ピアサポートスタッフとして働くことを依頼されました。チームについて説明を受けたとき、薬を処方された通りに飲んでいない人がいたら、即座にチームに報告することが職場の決まりであることがわかりました。 向井さんは、強制治療を良いものだとは感じていません。向井さんはどうするでしょうか?」という例からでした。

  • 薬を飲んでいるか飲んでいないかということを知るだけであれば強制治療ではないけれど、飲みなさいと言うとしたら矯正治療で、そうなるとしんどい部分が出てくる。
  • 自分がこの状況にあったら言わないかも。今の医療の現状の中で、心の声に照らすと苦しい感じ。
  • スタッフと職場のはざまで身動きが取れなくなった経験があるので身につまされる。
  • せっかくピアスタッフなので、自分の薬を飲んだ経験とか、当事者である部分を利用したい。
  • このチームが矯正治療をするということとは限らないのではないか。
  • 自分がチーム伝えたことで、薬を飲んでないって向井さんから聞きましたよ、と、その人に治療が強制されたりするのは嫌かも。

などの話が出ました。また、先月、ピアサポートとしてしたいことは、薬を飲んでるかどうか確認したりチームに報告したりすることではないのではないか。といった話もしたことも共有されました。

続いて、今日の勉強会の題材の例です。

村上さん(あなた)は、江川さんとピアスタッフとして関わっています。村上さんと江川さんは何でも話すことが出来ているようです。そしてある日、江川さんは村上さんに「あなたが私と会って話すのは、ここで雇われているからですよね」と言います。村上さんは何と言うでしょうか??

  • 「そうですね」といいそう。自分がここで働いていたから、江川さんと出会えました、とは思う。
  • 何をもってこのことを言っているのかを知りたいと思う。もっと会いたいとかそういうことなのか、どんなつもりでそう言ってるのかなと知りたい。
  • 働く人、仕事をする人になりたいから言っている場合もある。
  • 親しくなりたいという相手の気持ちがわかったとしても、自分の気持をテーブルの上に出すのも怖い。
  • これも、誰が鍵を持っているか、に関わる話と通じると感じた。
  • ご縁とか運命とか、あいまいなものに預けてもよいのかな、とも思う。
  • 仕事と違う場で支援者の人と会ったときにつっけんどんで、自分のそれまで知っていたその人の親切だったり優しかったりというのは仕事だったからなんだなと思ったことを思いだした。
  • お金が介在すると混乱してくる。自分がやっていることと、受ける利益。

以下、勉強会全体の感想も交えながら
  • テーブルに置く、自分にも相手にも見えるように差し出す、というような表現が好き
  • 義務感からやるのは嫌だ、自分の心が喜ぶことをしたい。
  • ここで雇われているからですよね?と、ピアスタッフだから言ってもらえることかもしれない。
  • お金のためにやっていることではなくても、お金が生じてしまうと、周囲も感覚が変わってしまう。
  • 当事者の架け橋、代弁者、先ゆくものとして、といった言葉が心に残った。
  • 村上さんもピア(同じ立場の仲間)を持つのがよいのでは。
  • すぐ行動したり思考が働くことをおさえる、ゆっくりとかみしめる、みたいなのを味わう。
  • お金をもらっているかどうかよりも、心の距離が気になった。触れられる近さだと、殴ったり傷つけたりもできてしまう。
  • どうこたえていいかわからなかった。
  • 仕事だから話聴いてくれてるんでしょ?って、考えようとしても、江川さんの気持ちや、自分の問題が入ってきてしまった。
自分に見えていなかった視点や、考え方に触れられた勉強会でした。ご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました。

次回:
11月8日(日)10:30-12:00(ZOOMによる開催)
東京周辺のIPS勉強会のメーリングリストにzoomのログイン先をお知らせしています。 zoom勉強会にご参加になられたい方でゆっきぃをご存じの方はゆっきぃへ直接、そうでない方は「IPS東京勉強会」 ipstky@gmail.com までご連絡ください。

-私(ゆっきぃ)のひとりごとです-
自分の心が喜ぶことをしたい、こうしなきゃ、と思ってやるのは苦しい、という参加者の方の言葉に、ほんとにそうだなぁと感じました。つい、お給料もらうならこれをしないといけないのでは、とか、職場から求められることに従わなければならないのでは、と思ってしまいがちだけれど、そう思っている自分に気づいて、自分の心が喜ぶことをできたらいいなぁと思いました。
-ひとりごと終わり-

今日の勉強会の進行↓
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IPS(インテンショナルピアサポート)東京での勉強会
日時:2020年10月11日(日)10:30-12:00 場所:zoom
1.はじまりの確認(チェックイン)
• 呼んで欲しい名前
• 何に動かされてここに来ましたか?
2.これまでの振り返り
医療・支援サービス機関で働くこと (7巻 p.3~)
ここでは、他の人たちの行動や考え、見方とは違っているように見えたとしても、ピアサポートをしていくことに焦点を当てたいと思います。従来の精神保健サービス(医療や福祉)に従事していると、いろいろな問題が持ち上がってきます。なので、何がピアサポートの貢献なのかに、しっかりと焦点をあてている必要があります!そのためには、ピアサポートについてよくわかっていて、他の役割に陥らないようにし、私たちは何をしていて、それはどうしてなのかを明確に説明出来ることが大切です。
例2 
向井さんは、自宅で暮らす精神疾患を有する方への訪問支援チームで、ピアサポートスタッフとして働くことを依頼されました。チームについて説明を受けたとき、薬を処方された通りに飲んでいない人がいたら、即座にチームに報告することが職場の決まりであることがわかりました。 向井さんは、強制治療を良いものだとは感じていません。向井さんはどうするでしょうか?
向井さんは、“鍵を持っているのは誰か”を連想させる、とても難しい立場にいます。向井さんは、決まりにただ従い、これも仕事の一部だと思うことも、あるいは、それに対して何が出来るかを考えることもできます。また上司に、ピアサポートの役割と価値について話し、こういった報告はピアの関係を損なうものだと示すことも出来ます。もしこの決まりに交渉の余地がないのであれば、向井さんは、この環境でピアサポートを本当に出来るかどうか、倫理的な判断をしなければならないかもしれません。
3.医療・支援サービス機関で働くこと 続き (7巻 p.4~)
例3
村上さん(あなた)は、江川さんとピアスタッフとして関わっています。村上さんと江川さんは何でも話すことが出来ているようです。そしてある日、江川さんは村上さんに「あなたが私と会って話すのは、ここで雇われているからですよね」と言います。村上さんは何と言うでしょうか?? 
 
「お金をもらっているからじゃないよ!お金もらっていなくても、江川さんと会いたいと思うよ」と言えば、気分よく感じるでしょう。でも、大切な点を見逃しています。一つは、村上さんはお金をもらっているから、そこにいるのです。そしてまた、意図を持って、そこにいます。本当の気持ちを言っているかもしれませんが、ピアサポートの役割と友達の役割との違いをはっきりさせる必要があります。村上さんは、江川さんの“語られていない”ストーリーを聞けるとよいのかもしれません。二人の関係は、この時点まで、とてもうまくいっていたわけなので、江川さんが、パワーの不均衡を感じたのは、何かがあったからなのかもしれません。時に人は、強いつながりを作ると、相手が離れていってしまうのではないかと恐れます。その思い込みに触れずにその周辺を行き来するよりも、そのような感情をテーブルの上に置いてしまったほうが(お互いに見えるように出すほうが)、はるかによいでしょう。 
村上さんは、江川さんに、より本物のつながりと感じるためには、どうする必要があるのかを訊くことも出来ます。最後に、彼らが友達になれば、片方が報酬を受けている関係から離れ、少し違った役割に変わることについて、どんな感じがしそうかも話しあう必要があるでしょう。
4.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?
【今後の予定】 11月:11/8(日)10:30-12時 ZOOM