2021年1月10日(日)ZOOMでのIPS勉強会のご報告

2021年1月10日(日)13:00-14:30にIPS東京勉強会をzoomで開催しました。

本日も、さまざまな地域からご参加をありがとうございました。今日は18名のご参加でした。

まずは前回の振り返りとして、11-12月に2ヶ月にわたっての「松本さんと長谷川さんの例」と、2020年にずっと皆で話し合ってきた、組織でピアサポートワーカーとして働くことについて扱った例(例1:自分の意見を主張しはじめたら、見下されているか、理解していないと言われるかのように感じる、例2:薬を処方された通りに飲んでいない人がいたらすぐに報告する決まりであると言われる、例3:あなたが私と話すのは、雇われているからですよね?と利用者さんに言われる)を振り返りました。
  • 調子を崩すことも変わろうとしないことも悪いことなのだろうか?生きているんだから調子を崩すこともあるし、変わり続けないといけない人生だとしたらつらい。
  • ピアスタッフになるのも精神科医になるというのも、どちらも回復のお手伝いをする手段でしかないのでは。自分は枠組みにとらわれずに本質や自分の感性からずれない自分の納得できる活動を探していきたい。
  • 自分の感情に責任をとっておらず、ピアサポートに基づいた話をしていないとは?
    • マニュアルや決まりに基づいた話をしていて、自分の気持ちを言っていない
    • 変わろうとする気がない、と、その人に責任をゆだねてしまっている。本当は応援したいのに悔しい気持ちになったり悲しい気持ちになったりとかの感情があるのでは
    • ピアスタッフ自身が調子を崩しているのではないか。
    • 自分の感情に責任を取っていないのは長谷川さんだけだろうか。松本さんも、医師も、誰も感情に責任を取っていないのでは。
    • 自分にはこのように見えてつらい気持ちになっているとか、気持ちや自分の見え方を言えたらいいなと思う。それと同時に、医療の現場や一般の組織で、あなたの気持ちは不要。というような対応をされることも多々ある。
  • 長谷川さんは、廊下で聴かれちゃって、この場で答えないといけないのかな、って迷ったかもしれないし、医師から聞かれたら医学の枠組みで答えねばと思ってしまいそう。後からすごく後悔しているかもしれないし見方が全然違う真実があるかもしれない。そう見えたけどどう?ってテーブルに出して話すことで、長谷川さんも、実はこう思っていたとか言えるかもしれない。
などの感想がありました。どの例も、また振り返りたい気持ちになりました。

そして、今回から、7巻の9ページ、「電話でのピアサポート」に入りました。電話でのピアサポートを考えるために、まずは、電話相談に対する見え方、電話相談についてのこれまでの経験や見聞きしたことについて話し合いました。
  • 人を殺したくなったと救急車に電話をしたことがある。パトカーと救急車がきて、家族が迎えにくるまで、とにかく死なないように、行動にうつさないように見張られていた体験がある。
  • いのちの電話は、かなり深刻なときには地域の警察に連携すると聞いたことがある。
  • 生活が苦しくどうすればいいかと電話してみたら、申し訳ないが知識がないということで終わってしまった。最後のエネルギーを振り絞って電話しているので、そこで力尽きて次の手段にいってしまう人もいる。
  • いのちの電話、時間が決まっているが、ひたすら傾聴してくれて、またいつでも電話してきていいよと言ってくれた。
  • いのちの電話は、電話がつながりにくかったということを覚えている。切羽詰まった人が電話したときにつながらないというのがあるのは心配。
  • いのちの山彦電話、みんなネットの電話相談、障害者福祉相談など、よいところもたくさんあって、元気なときにチェックしておいて覚えておくのもよいと思っている。
  • 自分のことを知っている人に相談したことがあるが、相手がこわがってしまった。一人じゃないよ、みたいなありきたりな返答で、私はそれを背負えない、と逃げるような返事に聞こえてしまった。最後の力を振り絞って、勇気を振り絞って電話してるんだけど、そうなってしまうと、どこにももう話せない。
  • 死にたいときにどうしてほしかったのかなって考えてみると、慰めてほしいわけでもなく、なんで死にたいのか一緒に話したかった。そこを共有できるだけで違ったかもしれない。
  • 電話相談にかけたら、実際に自殺行動を起こしたかどうかを聞かれた、つらい思いについては聴かれないままに。大変なことをしなければ電話しちゃいけないのかと追い詰められてしまった。
  • 電話相談を受ける人もボランティアなので疲弊している、と言われたことがあった。お金が出ない状態で大変だろうなと思うと同時に、その看板を掲げる限りは、そういうこともあるだろうとも思う。
  • 電話で話して、相手をこわがらせてしまい、結果的に関係が壊れたりと言うことを何度か経験してきた。また、自分が相談を受けて、受け止めきれずに結局関係をおわらせてしまったことも。電話ってなんでこんなに難しいんだろう。対面よりも電話はうまくいきにくいような気がする。相手の顔が見えないから、つらいという気持ちを言い過ぎてしまったり。
  • 仕事の一つに相談電話があるが、電話がつながりにくいとか対応がうまくいっていないとかたくさん聴く。LINEを用いての相談を開設しようという案がでている。
  • 自分がどうして死にたくなってしまったのかを聴いてほしい。その経緯や、それに付随する感情とか。
  • 死にたいという電話がかかってきたときに、話してくれたことをメモに書き、こういうことなんですね、と伝えつつ、メモを取っていたことをその相手に言ったら、相手の人が、自分の悩みが合理的にまとまっているので、そのメモを送ってほしいと頼まれたので送った。その人に喜ばれて、それ以降はそのメモを一緒に見ながら話したりした。
  • いのちの電話を受けている人たちも大変だと思う。
  • 苦しいときに電話をしたら、声も言葉も出せなくて無言になってしまい、いたずら電話と思われて結局話せなかった。無言電話の何割かはそういう人と思う。
などなど、さまざまな経験が語られました。そのまま話が続きつつ、感想もシェアされました。
  • 相談への対応が下手な人もたくさんいること、最後の力を振り絞ってそうだったら苦しいから、10回、20回かけたら一つくらいは(良い対応が)あるかもねくらいの認識が大事かも、と話し合っている。
  • 自分が生きていられたのは、誰かがまわりにいてくれたから。だから、おこがましいけれど、自分も一言でもつらい人に言葉を添えることができれば。
  • 死にたいというのは生きたいから。誰かになんとかしてほしいから電話をした。死にたいけど生きていたい。生きたいけど死にたいみたいな。死にたいという人の話をきいていければ。そんなことをこの場でみんなで話していけたら。
  • これまで、死にたいといわれて、アドバイスをしちゃったら切れちゃった。次にこんな経験があったら、なぜ死にたいのか、今後は聴きたい。
  • 電話相談に、そんなに死にたいわけじゃないのにかけてくる人、みたいなことを笑い話のように聴いたことがある。自分にとって電話相談が選択肢になかったのは、そんな話を聞いたからかもしれない。死にたいって気持ちに重さをつけないでほしい。
  • 何がいけなかったのか。どうして止められなかったのか。どうして自分の言葉が届かないのか。
  • 自殺することが悪いことなのかな?選択肢として生きるのも死ぬのも自由だと思う。ただ、相談してくるということは生きたい人たちだと思うので、生きてほしいなとは思う。
  • 電話相談のハードルが高い。10回20回かけていいところ、っていう認識になったらいいかも。
  • 一人の人が話を聞き続けるのは負担だろうと思うから、グループチャットみたいな感じでみんなで話を聞くという枠組みにしたら、負担が減るのかな、ということを考えたりもする。
  • 24時間365日チャットで相談できる(海外にいる人の時差などを利用して日本の深夜でも対応してくれる)サイトがある。https://talkme.jp/
  • 自分の気持ちを包み隠さず話せて、話を聞いてもらったという事実だけでありがたかったなと思うことがあった。何かしてほしいとかじゃなくて。ただ聴いてもらう。
  • みんなの言葉の一つ一つが胸に響いた。
  • つらい気持ちを話すのは勇気がいることだし、聴くことも勇気や力が必要なことだろうと思う。お互いに、安心して自分のことも相手のことも大切にできるような場作りをしていくことをできたらいいな。
さまざまなご経験や思いを共有してくださりありがとうございました。ブログに記載してある内容などで気になる点などありましたら、いつでもご連絡いただければと思います。

次回:2021年2月6日(土曜日)15:00-16:30(ZOOM)
東京周辺のIPS勉強会のメーリングリストにzoomのログイン先をお知らせしています。 zoom勉強会にご参加になられたい方でゆっきぃをご存じの方はゆっきぃへ直接、そうでない方は「IPS東京勉強会」 ipstky@gmail.com までご連絡ください。

-私(ゆっきぃ)のひとりごとです-
昨年皆で話し合ってきた例を振り返り、それぞれの立場によって、見える世界は異なること、それを差し出し会うことができると世界が広がり理解が深まるということを改めて感じさせられました。
電話相談についても、これまでのいろいろなご経験をお聞きして、そのどれもが自分の経験に響いて、心が動いてばかりでした。苦しかったときの思いやなぜピアサポートを学んでいるかについてなど、思いを共有してくださりありがとうございます。
人として、ピアとしてどんなことができそうかを今後も皆で勉強しながら深めていけたらと思います。それと同時に、どんなに努力をしたとしても相手が楽な気持ちになるような対応ができるときばかりでもなく、電話を受けた側が最善を尽くしても、相手はもう決めていることもあると思うので、相談を受けた人も自分を責めずにいられたらとも思います。「自分のことも相手のことも大切に」する関係性をご一緒に深めていきたいです。
-ひとりごと終わり-

今日の勉強会の進行↓
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IPS(インテンショナルピアサポート)東京での勉強会
日時:2021年1月10日(日)13:00-14:30 場所:zoom
1.はじまりの確認(チェックイン)
① 呼んで欲しい名前   ② 何に動かされてここに来ましたか?
2.これまでの振り返り
医療・支援サービス機関で働くこと (7巻 p.3~)
他の人たちの行動や考えとは違って見えたとしても、ピアサポートをしていくことに焦点を当てます。
例4
松本さんと長谷川さんは、地元の精神保健センターで一緒に働き始めてしばらくたちます。お互いに組織の中でピアの声を作り上げていることを誇りに思っています。しかし、長谷川さんが自分のことをスタッフと呼び、“自分の担当利用者”について話していることで、長谷川さんが、ピアサポートの視点を失いつつあるかもしれないと松本さんは心配しています。ある日、廊下で、医師が長谷川さんに、長谷川さんの担当している利用者の一人がどんな具合か尋ねているのを耳にします。長谷川さんは、その人は調子を崩し始めていて、変わろうとする気がないと答えています。 
 
ここにはいろいろな問題が絡んでいます。第一に、長谷川さんがそこにいない人のことを医師と話をしているという事実は、ピアサポートの核となる価値「私たちに関することを私たちのいないところで行わない」に反しています。第二に、長谷川さんは、長谷川さんの気になっていることについて、医学の枠組みを使って表現しています。これはその利用者の人に影響をもたらすだけでなく、自分の感情に責任をとっておらず、ピアサポートに基づいた話をしていません。
松本さんは長谷川さんをコントロールすることはできないのですが(そうすべきでもありません)、大切な学びについて、協力し合う関係を作ることはできます。
3.電話でのピアサポート(7巻 p.9~)
電話でのピアサポートが対面のピアサポートと違う点は何でしょう?会う方がピアサポートをやりやすいでしょうか? 違いはあるかもしれませんが、思ったほどの違いはありません。
ここで、IPSの「世界観」の考え方、つまり、ものの見方(どうしてそう思うようになったのか)について理解するために助け合うことに戻ってみましょう。たとえば、他の電話相談を使ったことがあったとしたら、電話でのピアサポートについて、どのような思い込みがあるでしょうか?
サポートを求めて緊急電話窓口に電話をしたら、警察が玄関に来ていたという経験を持つ人が沢山います。命の電話に電話をしたら、ありきたりの返答、「暖かいお風呂に入って、まだつらい思いが続いているようだったら、あとで電話してください」といわれただけだったという人もいるでしょう。よく経験することは、積極的な傾聴(最もいい場合)、あるいはアドバイスや強制ということさえあります。
つまり、相互的な、双方向の関係を電話相談で経験した人はあまりいないということです。これまでの電話相談で経験してきたかもしれないことを考えることは、電話でのピアサポートの出会いがどのようなものであるかを考えるのに役立つでしょう。
もし電話をしてきた人がピアサポートについて何も知らなければ、電話の始めに違いを説明することは重要です。(会話が余り先に進む前に)ピアサポートについて相手の人が知っていることを尋ね、この電話相談に何を期待しているのかを聞くとよいかもしれません。
①電話相談でどのようなことを経験してきた可能性があるでしょう?
4.勉強会の感想
今日、心に響いた事、印象に残っていることはありますか?

【今後の予定】 2月:2/6(土)15:00-16:30 ZOOM 


勉強会でのやりとりの抜粋を報告しています。ご自身の発言と思われることへの削除や修正をされたい方はいつでもご連絡ください。