10月12日(日)14時-16時に東京IPS勉強会が対面開催されました。10名の参加でした。
このところ、限られた勉強会の時間の中でどんな風に時間配分できるか、皆で試行錯誤中です。できるだけ演習(対話・聴くことの練習)に時間を取りたい、多くの人が自分の考えたことなどを話せるようにもしたい、そう考えると冒頭の始まりの確認やIPSで何をしようとしているか、前回の振り返りなどをどんなふうにできるか、というようなことに関する投げかけから今回は始まりました。具体的には、全体で話す時間と小さいグループに分かれて話す時間を組み合わせて使いたい、というあたりです。
参加している人たちと、今回のところは、全体ではじまりの確認(呼ばれたい名前と何に動かされてここに来たか)を簡単にして、IPSとは?を全体で聞いて、そのあと小さいグループに分かれて(今回は5人ずつの2グループ)、IPSについて感じた事などを話すことにしました。
- 会話をしやすかった
- もう片方のグループではどんな話が出たか知りたい気持ちになった
- そのメンバーだから話せたこともあるかもしれないと考えると出た話の内容を共有するのは避けた気持ちも
- それぞれの個人が自分の感じたことなどを聞きたいかも
- 5人くらいがちょうどよいように感じた。3人だと少なすぎるかも
というような意見がでました。
このあと、今日のテーマである「言語(ことば)について」です。「リカバリーのレベルが低い」? 「どうしたらこの人をエンパワーメントできるのだろうか」といった言葉には、どのような思い込みが入っているでしょうか?
- どうしたらエンパワーできるだろうか、とかつい言っちゃいそう
- 支援者が、「どうしたらリカバリーさせることができるだろう」と言ったりするが、悪気がないのはわかるが、リカバリーするのが良いこと、という前提、本人じゃない人がリカバリーさせることができると思ってるところとか、いろいろ気になる
- 何かの看護だったかの雑誌で、「リカバリー志向の援助」というような特集があって、リカバリーって言ってるのに「援助」と言っていて、受け入れがたいと感じた
- 相手のためと思っているようで、自分のために言っちゃうこともある。たとえば、ふさいでいる人に「元気出せよ」って言っちゃうのとかは、相手のことというよりも、自分がその人と早く遊びに行きたい、というような気持があることがある
- 被災者に「がんばれ」と言うこと
- 何を言っても、当事者ではなく、ただいる、ということしかできないときも
- メサイヤコンプレックス
- 支援することで達成感を得たり、やってる感を感じたり
といった、さまざまな思いが共有されました。
このあと、3人組に別れて、話す人、聞く人、観察者を全員が体験しながら以下の演習をしました。
①自分が言われたり、人の言っているのを聞いてなんだかモヤモヤしたしたこと、あるいは自分が言ってしまったことで気になっていることがあれば話してみてください。②そこにはどんな思い込みや前提があったのでしょう。
最後の「演習どうだった?」と「勉強会全体の感想」の共有は全体で行いました。
- 世界観に至るまでのプロセスなども聞いてみたい
- 観察者としている(3人組)のは良い
- 5分は短かった。もう少し時間があるとよい
- 話を聞いてもらえてよかった
- 正直な気持ちを話しているのを聞けて良かった
- ①について話したのだが、②を考えることで、①のモヤモヤしていたところが楽になった
- 聞いてもらえて涙が出てきてしまった。話してみて、自分には怒りもあったと気づいた
- 皆の感想を今聞いていて、①について自分にも怒りや悲しみがあったと気づいた。そして、②について考えてみると、私たちはそうやって学校とか社会の中で育ってきちゃった部分があるんだな、と感じた
- IPSの4つのタスクとかを全部を意識し続けるのは難しいけれど、繰り返しなのだなと思う
- 自分がキツイことを言っちゃうときって、自分の状況にもよるので、今の自分がどんな感じなのかを意識することも大事なんだろうなと思う
- 自分が言ったことにもモヤモヤすること
- 何か突っ込まれたりせず黙って聞いてもらえて、自分の言葉が自分に入って来ることを体験できた
- 自分のことが嫌いと思っていた頃もあったけれど、自分は自分のことを知りたいんだなと思う
- 難しいからまた来たい
- 「リカバリーするのが良いという思い込み」ということ。こうなるのがラクだから、そうなりなよ、と思っていた自分
- 「大丈夫だよ、できるよ」って言ったときに「あなたはできるかもしれないけれど自分にはできないんだよ!」と相手が怒った
- 手順のこととか「そのことについては気にしないでいいですよ」って、気にしてるのは相手なのに、自分が上から言っちゃってた
- 同じ言葉でも、イントネーションで、親切にしているのか、小馬鹿にしているのかわかる
- 過剰にうなずかれたりとか
- IPSはトラウマの経験を考慮したピアサポートとあるが、トラウマの経験を話させるのは相手にとってつらいのでは?
- トラウマの経験を考慮するというのは、相手の経験を話させるのではなくて、人はさまざまなトラウマを経験しているかもしれない、と思いを馳せ、配慮する、そんなピアサポートだ、という意味
というような感想や思いを共有しました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
【次回以降の勉強会予定】
11 月15 日(土)17:30~(ZOOM)
12 月27 日(土)15 時~(対面)場所:医学部3号館S102 (忘年焼き大会)
今回、モヤモヤしたことと、そこにある前提や思い込みについて話をしました。いろんな自分の思い込みにも気付いたし、誰かとの関係の中でモヤモヤしたことについても、相手がそういう言動になるのも、その人のせいというよりは、その人がそう思い込んだりそういった前提を持ってしまう事情や背景があるんだよな、、、と思わされました。もっと皆さんとお話ししたいという思いもありつつ、そう思いながらこの勉強会を続けられることのありがたさを感じつつ、です。
勉強会の振り返り:
- はじまりの確認は全体でやったのよかった。
- はじめて来る人とかもいるし、お互いの雰囲気がわかる。
- それぞれが一度声を出しておくことで、小グループに行っても話しやすい。
- 演習の時間がやっぱり短かったね。
- 今回は3人組で、話すの5分、静かな時間1分を3回。
- 2人組にすれば7分、1分でできるのだけれど。
- 3人組でできるのはよかった。
- 感想共有をもっと短くする?(今日は20分取ったけど)
- でも、やってみてどうだった?というのが大事という意見あり。
- だとすると、前半を短くするしかないかー。
- IPSでやろうとしていることや前回までの振り返りの説明はわかりやすかった。
- 資料に書いてあることを読むだけだったら、グループに別れてからでもよさそう。
- 振り返りは、覚えていることをちょっと出してもらうくらいで構わないと思う。
- 小グループの中での時間の使い方はそれぞれのグループにまかせてよさそう。
- 小グループ、4~5人くらいが話しやすくてよさそう。3人だとグループが小さすぎる気がする。
- 今日は10人だったから、全体で名乗り合うことができたけれど、もっと多い人数の時はどうしたらよいだろう。
- 順番にぐるっと言ってもらって、パスあり、というやり方もあるけど、準備のできたときに、ってのも大事にしたい気持ちもある。
- いちばん最初のところって、来た人にとってすごく大事なところだから、そこでIPSの大事にしたいことが伝わることも大事なのではないか。
- もしも順番にぐるっと言うことをやってみるときでも、「こういうことを大事にしたい」という思いと、「演習の時間を取りたい」という思いとがあって、こういうふうにやろうと思う、ということを伝えるのが大事そう。
- ZOOMの時にはさらに時間が短い(90分)。
- ZOOMも2時間にするか?いやでも集中力がもたない。
- 対面の場合には途中休憩を10分間入れているけれど、ZOOMは入れずに90分にしている。
- ただ、ZOOMの場合は席移動とかの時間がいらない。
- まぁやっぱりやってみるしかない。
- 次回にもう3巻に入るという選択肢と、言葉遣い(2つのストーリー)をやるという選択肢がある。
- ぜひ2つのストーリーをやりたい。
- 自分はここを読んだ時、なんでこれをやるのか意味がわからなかった。どうしてこれが大事だと思うのかを話すの大事そう。
日時:2025 年10 月12 日(日)14:00-16:00 場所:東京大学医学部3号館1階S102
1.はじまりの確認(チェックイン)①呼んで欲しい名前 ②何に動かされてここに来ましたか?
2.意図的なピアサポート(IPS)で学ぼうとしている関係と、この場でしたいこと
(IPSでの)ピアサポートとは、お互いが学び成長するのに役立つような関わりをすることです。 IPSはトラウマの経験(こころが傷ついたり、おさえられるような体験)を考慮したピアサポートです。
IPSで大切だと考えている4つのこと:
(1)つながり:通じ合う感覚 (2)世界観を理解するために助け合う (3)相互性 (4)向かうこと
IPSの3つの原則(principles):「助け」から「学び」へ、「個人」から「関係」へ、「恐れ」から「希望」へ
3.前回までの振り返り(前回は6/22 日対面,7/20 8/21 ZOOM, )前回:最初の会話とことば
最初の会話が持つ意味と重要性/言語が現わしている世界観に気づき、言葉を意識的に使う大切さを理解する
4.言語(ことば)について(2 巻 p.8〜 )
近年、精神保健の領域では、使われている言葉に根本的な変化が起きています。たとえば、“慢性的な精神病”という考えを持つ人はほとんどおらず、その代わり、誰もが成長や発達の段階のいろいろな過程にいるに過ぎないと考えています(そう考えていて欲しい、と思います)。いくつかの言葉は良い方向に変わってきているようですが、いろいろなところに、思い込みが見え隠れしています。たとえば、誰かのことを「リカバリーや癒しの到達レベルが低い」と言うときや、「どうしたら、この人をエンパワーメントする(力を与える)ことが出来るでしょうか」と質問するとき、そこにどのような思い込みが入っているのかを考えてみてください。ただ単に、違う言葉を使えばよいという問題ではないのです(それは良い方向への第一歩なのですが)。問題なのは、私たちが口にしたり、耳にする言葉の背後に何が示唆されていて、どのような前提が潜んでいるのかに気づくことです。
私たちが、敬意を示して言っているつもりでも、実際には、人に対して否定的な思い込みにあふれた言い方が数多くあります。そのような話し方をしているときには、上から目線で、相手の人がどのように反応するかがわかっていると思っています。ですから、まずは、そのことに気が付いていることが大切です。
精神保健の領域で使われている言葉
「リカバリーのレベルが低い」? 「どうしたらこの人をエンパワーメントできるのだろうか」?
上から目線/言葉が暗黙のうちに示してしまう立場関係
♪演習:
1.「宮本さんって、自分を変える気がないよね」「こういうことを言うと森田さんがキレちゃうんじゃないかな」
こういった発言にはどんな思い込みや前提があるでしょう?
2. ①自分が言われたり、人の言っているのを聞いてなんだかモヤモヤしたしたこと、あるいは自分が言ってしまったことで気になっていることがあれば話してみてください。
②そこにはどんな思い込みや前提があったのでしょう。
(うまく話さなくてよいです。浮かんだことを言葉にしてみてください。)
あなたにとって優先度の高いことがあったら、その話をするのもOK。
その場合、その相手になる方は、:話し手の見える世界を理解しようとしながら聞く。黙って聞くだけでよい。(話し手の世界観を味わいながら、お互いの間に流れているものにも意識を向けてみながら。)
5.勉強会の感想:心に響いた事、印象的だったこと、あなたの世界観に影響したことはありましたか?
★次回までに今日のテーマについて考えたり、他者の世界観も意識してみるのはいかがでしょう